AIビジネスは、なぜ立ち上がらないか?

これまでの経験から、「AIビジネスは、なぜ立ち上がらないか?」について考えてみたい。

AIビジネスが立ち上がらない理由

AIビジネスが立ち上がらない理由は、以下の3点と考えます。

日本の経営層のビジネス革新への取り組みの遅れ変化するビジネス状況への対応戦略が決まらない。
目先は困っていないため、成長分野への投資判断ができない。
AIは手段であり、目的ではないことの不理解。
学習済モデルの汎用化が困難汎用的にモデル化可能なものは、翻訳、音声認識、文字認識などに限られているのが実情。
十分な学習データが必要でデータ収集能力の高いGoogleなどが圧倒的に有利な状況。
画像や音声系のAIは、撮影・記録環境や対象物のバリエーションなど事前い学習モデルを作成することが困難。
また、データ収集・学習・検証のライフサイクルを構築しないと実用的なレベルにならない。
AIを使える技術者が不足PoC()では、AI技術者自ら、OSSを探して適用している。
AI関連の論文は日々増加しており追随するのが大変。(進化する技術)
業種SEは、既存システムのリプレースに忙しく、リスクがあるAIビジネスに消極的。
AI技術者も不在。
AI技術だけでなく、業務知識がデータサイエンスなど広い知識が必要。
AIが立ち上がらない理由

AI投資、守りか攻めか?

守りのAI投資
(コモディティ領域)
攻めのAI投資
(競争領域)
目的コスト削減や効率化売上や利益の増大
効果社会課題としてすでに
解決策があるもの解決
自社事業の競争優位性
施策クラウドサービスや
ソリューションパッケージの利用
内製化やラボ型開発の推進
データアナリシスト、AIエンジニアの育成
外部コンサルの活動

AI導入を成功させる秘訣

AI導入を成功させる秘訣を、「人」、「もの・技術」、「金」の3つの視点で考えると以下のようになる。

AIで解決したい課題を経営者が明確にした上で、予算を確保し、体制を作り、業務ライフサイクルにデータの収集・分析から始めることが重要である。

これらのプロセスを実行すると結果的に「デジタルトランスフォーメーション」が実現できることになる。

もの・技術
お客様経営トップの課題意識・戦略AIで解決したい課題の明確化データトランスフォーメーションを含む予算の確保
お客様のモチベーションが高いAI推進リーダーディープラーニングなど適切な技術の選択
お客様の現場で業務を理解している専門家精度の高い教師データの作成
(データの正規化・クレンジング)
または、適切な定式化
スモールスタート
お客様内の組織横断体制
データアナリシストやAIエンジニア
業務ライフサイクルへの組み込み
運用モデル・データ蓄積と学習
(デジタルトランスメーション移行)
費用対効果の明確化

AIの疑問

Q1. AIは思いもよらない答えをだせるか?

A1. 一般的には思いもよらない答えはだせない。

FAQ検索:過去のFAQなどから辞書を作成し、どう対応するかを決めるため、FAQで対応したエキスパートの答え以上のものは期待できない。用意するFAQデータに多様性があれば、個人レベルでは対応不可能なものを実現できる。

ディープラーニング:教師あり学習といわれるものは、「犬」、「猫」のラベル付けした画像データを学習させるため、ラベル付けした以上の回答が得られることはない。ただし、精度は人を超える場合がある。

為替の裁定取引やリスク回避した株取引、化学構造式の探索など、量子コンピュータなどにより、膨大な組合せから最適解が求まることはあるが、数式などで定式化した有限な範囲内

教師なし学習は、大量に訓練すれば思いもよらない答えを出せるようになると期待するかもしれないが、どんな答えを出すべきか、明確に与えない限り、意味のある答えはだせない。したがって、思いもよらない目的を明確化することができない限り難しい。

例外的には、将棋や碁のプログラムのように、ルールに従って勝つことを目的としたものは、膨大な手数の中から、人間には探索しきれていなかった「手」を発見するケースがでてきている。そういう意味で将棋や碁などは、AIによって、新定石が生まれている。

Q2. AIは人の感性に基づくようなものは生み出せない?

A2. 生み出した例がある

ディープラーニングは、「感性(五感)による知能」を実現する技術である。

大量な処理結果例を学習させれば、学習結果が百万単位のパラメタとして蓄えられる。

ドイツの研究者Gatysらは、「ゴッホの画風」をディープラーニングで学習させ、別の風景写真からゴッホ風の画像を自動生成できることを示した。

これは「ニューラル・スタイル・トランスファー」と呼ばれ、多くの研究者が取り組んでいる。これらの技術は、画像から音楽や香り、味などに発展していく。

Q3. AIの進化を阻害する要因は?

A3. 一般的には思いもよらない答えはだせない

FAQ検索:過去のFAQなどから辞書を作成し、どう対応するかを決めるため、FAQで対応したエキスパートの答え以上のものは期待できない。用意するFAQデータに多様性があれば、個人レベルでは対応不可能なものを実現できる。

ディープラーニング:教師あり学習といわれるものは、「犬」、「猫」のラベル付けした画像データを学習させるため、ラベル付けした以上の回答が得られることはない。ただし、精度は人を超える場合がある。

為替の裁定取引やリスク回避した株取引、化学構造式の探索など、量子コンピュータなどにより、膨大な組合せから最適解が求まることはあるが、数式などで定式化した有限な範囲内

教師なし学習は、大量に訓練すれば思いもよらない答えを出せるようになると期待するかもしれないが、どんな答えを出すべきか、明確に与えない限り、意味のある答えはだせない。したがって、思いもよらない目的を明確化することができない限り難しい。

例外的には、将棋や碁のプログラムのように、ルールに従って勝つことを目的としたものは、膨大な手数の中から、人間には探索しきれていなかった「手」を発見するケースがでてきている。そういう意味で将棋や碁などは、AIによって、新定石が生まれている。

Q4. AIを運用システムに導入した場合、運用時の費用がかかるのでは?

A4. 従来のシステム運用より費用はかかる

運用のライフサイクルを事前に設計する必要がある。

学習したデータで結果が変わるため、運用時に以下の仕組みの設計が必要

  • 入力と結果の精度を測定(継続的な監視とトレーサビリティ)
  • 学習データが陳腐化したり、相互関係性が変わった場合は、再学習を行い、学習データを作りなおす

Q5. AIで儲かっている会社はあるの?

A5. あるけど、ないかも。

AIを業務に取り入れて儲かっている会社は、Amazonのリコメンドや、
来客予測、タクシーの利用者推定など事例は多数ある。

AIのプラットフォーマで儲かっている会社は現時点ではないと思われる。

GoogleやAmazon、IBMなどは、投資モード。積極的なM&Aを行っている。

富士通も量子コンピューティング関連で、1QBitとの協業や、トロント大学と戦略的パートナーシップを結んでいる。

トロント大学では10プロジェクトを開始しており、放射線治療の最適照射など、期待できる研究が進んでいる。

Q6. AIは人を幸せにするか?

A6. 答えは、みなさん次第

幸せの定義を考えるのは人。

「人の幸せ」は、 「人が考える」  しかない・・・。

AI時代を生き抜くために

AI時代を生き抜くためのスキルとは?

  • 業務プロセスを理解した上で、課題を見つけるスキル
    • お客様と対峙し、腹を据えて、業務の理解に務める
    • 文系が重要になってくる(文系の課題もAIで解決できるようになる)
    • 「機械(情報システムを含む)の挙動」ではなく、「人の活動」を着眼点にする
  • データサイエンティスト(AIリテラシー)スキル
    • 数学、特に行列は再度学習する lPythonを使えて損はない
    • 確率と推定や統計
    • データ加工技術(マイニングやノイズ除去、異常値の取扱い)
    • 機械学習・ディープラーニング・アニーリング技術
  • ビジネスを見通すスキル
    • 技術的に可能なことと、ビジネスの有意性は違う
    • ビジネスオーナー、ステークホルダの関係の理解(ビジネスオーナー(出資元)は、顧客か、第三者か、自社か?)
    • 費用負担と利益を生む仕組み(ビジネスモデル)を考える

※AI技術はコモディティ化が進み、従来型のSIビジネスは通用しない。

AI時代を生き抜くための会社のありかたは?

  • 真のデジタル化を目的思考で経営トップが予算をもって取り組む(DX化)
    • 工場・サプライチェーンの一元化、見直し(目標:加工費20~30%減)
      • 工場稼働率向上(閉鎖、海外工場活用、サーバ・ストレージ・ネットワーク機器工場統合)
      • リアルタイム処理(需要変動に強い仕組み)
      • 設計情報の共通化(どの工場でも同品質なものづくりができるなど)
    • 経理・購買の一元化、見直し(目標:原価10~20%減)
      • ソフト購買含む、なれあいの解消。発注情報のシェア・価格の適正化。
      • 購買共通化(他社協調含む)
    • 国内販売網・パートナー契約の見直し
  • サービス(使役)でないコアビジネスをつくる(もの売り・人材派遣からの脱却)
    • Amazonが物流システム、日立がインド銀行と合弁会社(インド国内の金融システムに入り込み、ATM優先展開)など。
    • 自社で金融や社会インフラ(電力、交通、通信、資源、水道、学校、病院)などのコアビジネスをつくるか、買収する。IoTやAIの活用で利益がでそうなものがなおよい。
      (国内がダメなら海外でも可)
    • もの売り・人材派遣からの脱却後の組織ポートフォリオの再設計。(デザイン経営)

いろいろ書いてみたが、結局は、経営者のパッションが重要だ!

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